腟式メッシュ手術:TVM手術

 腟式メッシュ手術は、2004年にフランスのグループによって報告された最新の骨盤臓器脱治療法です。その優れた、治療効果により、近年、爆発的な広がりを見せてきました。しかし、先進的だあるがため、未知の部分もあり、近年、いろいろな合併症が起こりうる事も知られるよになりました。したがって、腟式メッシュ手術を受ける方は、この術式を良く理解し、その長所と短所を知った上で判断することが重要です。

 

腟式メッシュ手術は、腟の前方と後方に二枚のメッシュを用います。

  • 前方のメッシュは、膀胱瘤に対して
  • 後方のメッシュは、直腸瘤に対して

されます。

 子宮のない方は、前方のメッシュと後方のメッシュを結合させ た一体型メッシュを使います。

  • 一体型メッシュは、子宮摘出後の腟脱に対して

①膀胱瘤に対する腟式メッシュ手術

私の総合評価 ★★★★ 

  手術時間 1時間30分位

  出血 100ml 時々 

     時々結構出血して対応に苦慮する事あり!

  合併症 術後の尿失禁の増悪の可能性?

  入院期間 術後4−5日で退院

  保険適応あり。

  問題点:

  • メッシュを張っていない部分の再発の可能性あり!
  • 術後に、尿漏れの増悪の可能性あり!
  • 良きせぬ術中出血の可能性あり!
  • 長期的に、メッシュビラン等の合併症が起こりうる!

  長所

  • 膀胱瘤のメインの骨盤臓器脱には非常に適している
  • 短時間ですむ


 この術式は、膀胱瘤に対して非常に適している。したがって、汎用性は、高くないが、適応を良く選べた非常に効果的な手段となり、私も頻用している。メッシュビラン等の発生の問題あるが、適切な手術を行えばあまり問題がないと考えている。

②直腸瘤に対する腟式メッシュ手術

私の総合評価 ★★☆☆☆ 

  手術時間 1時間分位

  出血 100ml 時々 

     時々結構出血して対応に苦慮する事あり!

  入院期間 術後4−5日で退院

  この疾患に対する保険適応はなし。

  問題点:

  • 最近、アメリカのFDAより、その有効性に疑問!
  • 術後に、ビランを起こす事がある!
  • 良きせぬ術中出血の可能性あり!


 この術式は、単独でされることはほとんど無く、前述の前壁メッシュと併用される事が、多い。最近、アメリカのFDAより、その有効性に対する疑問が出され、また、メッシュビラン等の合併症の発生率の問題もあり、現在、私も、極力、後壁メッシュを実施していない。

 

③腟脱に対する一体型メッシュを用いた腟式手術

私の総合評価 ★★★☆☆ 

  手術時間 2時間位

  出血 100ml 時々 

     時々結構出血して対応に苦慮する事あり!

  合併症 術後の尿失禁の増悪の可能性?

  入院期間 術後4−5日で退院

  前壁メッシュとして医療保険を利用

  問題点:

  • 術後に、尿漏れの増悪の可能性あり!
  • 良きせぬ術中出血の可能性あり!
  • 長期的に、メッシュビラン等の合併症が起こりうる!

  長所

  • 再発は少ない
  • 手術時間は短い


 この腟脱(子宮のない患者さん)に、どんな手術をするかは、実は、私にとって、悩みどころでもある。腟脱は、再発脱の可能性が高い。したがって、効果の高い方法が適している。したがって、性交渉のない方には、全腟壁閉鎖術、性交渉の希望のある方には、この一体型の腟式メッシュ手術あるいは腹腔鏡下仙骨腟固定術を行う事になる。

 後壁メッシュは、FDAより有効性に疑問がなげかけられたが、一体型となるとその術式の簡便さにより、実施する価値があると考えている。実際の術式の選択は、患者とよく相談して決める事になる。

 

この術式は、膀胱瘤に対して非常に適している。したがって、汎用性は、高くないが、適応を良く選べた非常に効果的な手段となり、私も頻用している。メッシュビラン等の発生の問題あるが、適切な手術を行えばあまり問題がないと考えている。